みやげもんコレクション 216 張り子のきつねさん
大阪府/和泉市
文 / 川端正吾
信太森に伝わる恋物語にちなむ葛の葉の化身。
かつて大阪阿倍野の里には、安倍保名(あべのやすな)という若者がおり、家の再興を願ってこの信太森(しのだのもり)神社に日参をしていました。ある日、お参りを終えた帰路に、狩人に追われたキツネを守ろうと必死に争い、気を失ってしまいます。意識が戻ると、いつの間にか美しい女性に介抱されていました。女性の名は葛の葉(くずのは)。その後、2人は結ばれて夫婦となります。
やがて、男の子を授かり幸せな日々を過ごした5年後の秋、子供の添い寝をしていた葛の葉は、寝ているうちに神通力を失い、キツネの姿となってしまいます。ついにこれまで、と、歌を詠んで去りました。
「恋しくは たづねきてみよ 和泉なる 信太の森の うらみくずの葉」。その歌を見た安倍保名は、泣く子を背にし、葛の葉の名を呼びながら信太森神社へ行くと、境内一面に茂る葛の葉っぱが。名を呼ぶ安倍保名と子の泣き声に応えるように、葛の葉っぱはざわめいたといいます。子はのちの陰陽師、安倍晴明となります。
大阪・和泉市にある信太森葛葉稲荷神社では、この逸話にちなんだ「キツネさん」の張り子が授与されています。
写真上/張り子のきつねさん700円(信太森葛葉稲荷神社☎0725・45・7306)。胸には、古くから使われている御朱印が押されている。写真中/信太森葛葉神社の境内。写真下/キツネの絵馬も。
掲載:BRUTUS#811 (2015年11月1日号)
値段・問い合わせ先などは、発売当時のものです。