みやげもんコレクション 233 伝来人形
京都府/宇治市
文 / 川端正吾
暗闇の奇祭で知られる縣神社の婦人の守護神。
縣(あがた)神社にて毎年6月5日に行われる宇治の初夏の風物詩『あがた祭り』。町には500店以上の露店が並びます。露店は22時過ぎで終了し、大半の観光客はここで帰路に就いてしまうのですが、あがた祭りの本番は実はここから。深夜0時になるとすべての明かりを灯すことが禁じられ、暗闇の中で、梵天渡御と呼ばれる神事が行われます。梵天とは太い竹竿の先に、直径2m程度の御幣を飾ったもの。この梵天に神移しを行い、町を練り歩きます。道筋の明かりもすべて消された闇の中、梵天を前後に揺さぶったり、スピンしたりと荒々しい練り込みが行われるのです。その後、本殿に戻った梵天の御幣は、護符として参拝客に配られます。縣神社は御祭神として木花咲耶姫(このはなさくやひめのみこと)命を祀っており、婦人の守護神として信仰を集めていることから、護符は、特に子授け、安産の御利益があるとされています。写真の土人形は、そんな縣神社で授与される、もう一つの安産守り「伝来人形」です。由来などの記録は残っていませんが、遅くとも江戸中期には授与されており、護符と同じく子授けと安産のお守りとして愛されています。
写真上/伝来人形2,000円(縣神社☎0774・21・3014)。写真中・下/祭り当日は漆黒の闇に包まれる縣神社の本殿と鳥居。「暗闇の奇祭」として全国的にも知られ、毎年約12万人もの参拝客が集まる。
掲載:BRUTUS#828 (2016年8月1日号)
値段・問い合わせ先などは、発売当時のものです。