マガジンワールド

みやげもんコレクション 238 猿面

福岡県/福岡市
文 / 川端正吾

猿面1,000円。

災難がサル。庚申の日にだけ出会える魔除け猿。

天照大御神(あまてらすおおみかみ)の命によって天孫降臨した瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)を道案内したことで知られる猿田彦大神を祀る、福岡市早良区の猿田彦神社。この神社で60日ごとに行われる庚申祭では、普段はこぢんまりとした静かな神社が、多くの人で溢れ返ります。お目当てはこのお祭りの日にだけ授与される「猿面」。

庚申信仰とは、もともとは平安時代に中国から伝わったもの。庚申の夜になると、人間が寝ている間に、体内から三尸(さんし)の虫が抜け出して、天帝(古代中国における最高神)にその人の罪を告げ口され、寿命を縮められてしまうと信じられていたことから、この日は虫が出ないように寝ずに夜を明かしたそうです。この庚申信仰が、猿田彦信仰と結びつき、さらに動物の猿と結びついたことで、「災難がサル(去る)」という信心に転じて、庚申の日に猿面が授与されるようになりました。

猿面は博多人形の職人によって一つ一つ手作りで作られたもの。玄関の外に掛けて、家に近寄る災難を退け、幸福をもたらしてくれる縁起物として愛されています。次の庚申祭は10月5日の水曜日ですのでぜひ!

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写真上/猿面1,000円。写真中/こぢんまりとした境内には、狛犬ではなく猿の像が。写真下/町の多くの家の軒先に、猿面が下げられていた。●猿田彦神社/福岡県福岡市早良区藤崎1−1−41。


 

掲載:BRUTUS#833 (2016年10月15日号)
値段・問い合わせ先などは、発売当時のものです。