「備中神楽人形」みやげもんコレクション 244 BRUTUS No.839
みやげもんコレクション 244 備中神楽人形
岡山県/岡山市
文 / 川端正吾
人々を虜にした備中神楽に登場する小さな神々。
岡山県備中(びっちゅう)地方で行われる伝統芸能である「備中神楽」。もともとはこの地方の信仰対象であった荒神を鎮魂するために行われていた舞で、神職が清めの儀式や悪霊払いの舞を奉納する神事としての要素が色濃いものだったそうです。ところが、幕末になると、能や狂言、歌舞伎などが盛んになって庶民から大変な人気を集めるようになり、国学者の西林国橋がこれまでの荒神神楽に「出雲神話」や「古事記」「日本書紀」などの物語を取り入れ、演劇的な演出を加えました。また演じるのも神職でなく、熟練した太夫が舞うようになります。これが農村の人々の娯楽として大人気となり、代表的な郷土芸能となって今日まで伝わっています。そんな備中神楽をモチーフにした郷土玩具がこの「備中神楽人形」です。3㎝程度の小さな人形で、神楽に登場する神々が5体セットとなっています。左から大国主命(おおくにぬしのみこと)、松尾明神、建御名方命(たけみなかたのみこと)、室尾明神、事代主命(ことしろぬしのみこと)です。備中神楽発祥の地といわれる高梁(たかはし)市にある成羽焼(なりわやき)の窯元で作られており、艶ありと艶消しの2種の顔料を使い分けた成羽焼独特の技法を使った仕上がりになっています。
写真上/備中神楽人形(5体セット)1,700円(晴れの国おかやま館☎086・234・2270)。 写真中/岡山の張子の首振り虎。倉敷張子をはじめ、各地で作られている。 写真下/同じく岡山の道楽かん工房の面。
掲載:BRUTUS#839 (2017年2月1日号)
値段・問い合わせ先などは、発売当時のものです。