鴨方土人形 みやげもんコレクション 251 BRUTUS No.846
みやげもんコレクション 251鴨方土人形
岡山県/浅口市
文 / 川端正吾
多くの幸を運ぶタコを抱いた鴨方の招き猫。
鴨方土人形は、岡山県浅口市鴨方町の土人形です。もともとは大阪市東淀川区の北江口で作られていたため江口土人形と呼ばれていましたが、製作者の橋本淳一さんが約7年前に鴨方町に移られ、名前が変わりました。まだ江口を拠点としていた時代と合わせても約20年と歴史の浅い玩具ですが、親子2代で主に招き猫や、干支車、饅頭喰い人形などを製作しています。
橋本さんは500体以上の各地の招き猫を収集しているほどの猫好き。それもあって、鴨方土人形にはさまざまな招き猫の作品があります。今回ご紹介する「多幸猫」は、お腹に大きなタコを抱く猫。タコを「多幸」にかけています。タコは、末広がりの数字でもある8本の足を持ち、赤い体は疱瘡除(ほうそうよ)けや魔除けの意味も持っているため、とても縁起の良い生き物と信じられてきました。そんなタコを抱く招き猫は、古くは岩手県の花巻人形などにも見られたモチーフ。鴨方の多幸猫は、顔の黒い模様がハチワレになっているのが特徴です。ハチワレ模様も末広がりに通じるところがあり、なにかと幸を多く招いてくれそうなありがたい猫です。
写真上/多幸猫5,000円(鴨方土人形 橋本淳一☎0865・44・2976)。写真中/着物柄も豊富な饅頭喰い人形。招き猫を抱いた人形もある。写真下/日本民藝公募展優秀賞を受賞したこともある馬乗り天神。
掲載:BRUTUS#846 (2017年5月15日号)
値段・問い合わせ先などは、発売当時のものです。