鬼枡 みやげもんコレクション294 BRUTUS No.889
みやげもんコレクション 294鬼枡
埼玉県/比企郡
文 / 川端正吾
鬼を祀る神社の節分で使われる鬼絵の豆まき枡。
鬼というと厄災の象徴のような存在ですが、埼玉県比企郡にある〈鬼鎮(きじん)神社〉はこの鬼を心の強さの象徴として大切にしています。なぜ鬼を祀(まつ)ることになったのか? その由来には、少し悲しい言い伝えがありました。
その昔、鍛冶屋に若い男が弟子入りをしました。一人前の刀が打てるようになった頃、男は鍛冶屋の美しい娘を嫁に欲しい、と言いだします。鍛冶屋は返事に困り「一晩で100本の刀を打つことができたら嫁にやろう」と無理難題を押し付けました。その夜、男は人間とは思えないほど鋭い目つきになり、頭からは角を生やし、鬼となって、恐ろしい速さで刀の山を作り出します。しかし、99本目を打ち終えたとき、夜が明けてしまいました。鬼は力尽き、倒れて死んでしまいます。鍛冶屋は哀れに思い、鬼を庭に埋め、そこに宮を造って祀りました。これが鬼鎮神社の始まりです。
神社には鬼にまつわる授与品が数多くあり、写真上の鬼の絵の入った豆まきの枡(ます)もその一つ。鬼鎮神社では、節分の豆まきの際、「福は内! 鬼は内! 悪魔外!」というかけ声がかけられるそうです。
写真上/鬼枡2,800円(豆付き)。節分祭の日に授与。鬼絵馬700円。写真中/鬼の金棒の厄払いのお守り(小)700円。写真下/お守りにも鬼のモチーフが。各700円(以上鬼鎮神社☎0493・62・2131)。
掲載:BRUTUS#889 (2019年4月1号)
値段・問い合わせ先などは、発売当時のものです。