附馬牛人形 みやげもんコレクション298 BRUTUS No.893
みやげもんコレクション 298附馬牛人形
岩手県/遠野市
文 / 川端正吾
粘土に和紙を混ぜ込んで作る独特な土人形。
岩手県遠野市の附馬牛(つきもうし)には、江戸時代から作られている「附馬牛人形」と呼ばれる郷土玩具があります。京都の伏見人形の流れを汲む人形で、伏見人形から仙台の堤人形、岩手の花巻人形を経て、人形作りの技術が附馬牛へと伝わりました。そのため、花巻人形とは人形の型や、華やかな彩色方法が似ているのですが、附馬牛の人形はその製法に独特なものがあります。一般的な土人形は、粘土で型をとったあと、窯で焼いて成形しますが、附馬牛人形は焼きません。粘土に和紙を混ぜたもので型をとり、乾燥させて成形は終わりです。そのため、割れづらく、とても軽いという特徴があります。土人形と張り子の中間のような、こうした製法で作られる人形は珍しく、日本ではほかにはあまりないと思います。附馬牛人形は明治初期に廃絶し、しばらく作られていませんでしたが、昭和末期に復活しました。この独特な製法を復元するのに、10年を要したそうです。
写真上で紹介したのは赤い河童(かっぱ)がモチーフの人形。河童というと緑なのが一般的ですが、遠野では河童は赤い体をしていると伝わっています。
写真上/河童人形5,000円。緑の河童人形もある。写真中/干支の亥5,000円。写真下/遠野の民俗行事である鹿(しし)踊りをモチーフに作られた人形8,000円(以上遠野郷土人形民芸村☎0198・62・1335)。
掲載:BRUTUS#893 (2019年6月1号)
値段・問い合わせ先などは、発売当時のものです。