いぬみくじ みやげもんコレクション329 BRUTUS No.924
みやげもんコレクション 329いぬみくじ
愛知県/名古屋市
文 / 川端正吾
犬の王のお告げを聞ける愛らしいみくじ。
安産祈願で知られる愛知県名古屋市にある伊奴(いぬ)神社。その由来には、こんな伝説があります。ある日、山伏が旅の途中で伊奴村(現:稲生(いのう)町)に泊まった際、村人が洪水で困っているという話を聞き、御幣(ごへい)を立て祈祷をしました。すると洪水は起こらなくなりました。山伏は「御幣を開いてはいけない」と告げて去りますが、村人はつい開いてしまい、そこには一匹の犬の絵と、「犬の王」という文字が書いてありました。すると、御利益が消え、村はまた洪水に遭ってしまいます。偶然、再び山伏が訪れたため、また祈祷してほしいと頼むと、山伏は「御幣を埋めて、社を建てて祀(まつ)れ」と告げます。その通りにすると、ぴたりと洪水になることがなくなったそうです。この社が伊奴神社の始まりだと伝わっています。以来、災難除けの神様として崇められてきましたが、犬はお産が軽く多産であることから、安産祈願の神様としても信仰を集め、犬の王の石像も奉納されています。そんな犬の王を象(かたど)った授与品も数多くあり、特に人形におみくじが入った「いぬみくじ」はその愛らしさから人気となっています。
写真上/いぬみくじ。各300円(伊奴神社☎052・521・8800)。写真中/境内に奉納されている犬の王の石像。写真下/元日には多くの参拝客が訪れ、特に戌年である平成30年には約3万人が訪れた。
掲載:BRUTUS#924 (2020年10月1日号)
値段・問い合わせ先などは、発売当時のものです。