願掛け蛸 みやげもんコレクション341 BRUTUS No.936
みやげもんコレクション 341願掛け蛸
京都府/京都市
文 / 川端正吾
母を一心に思う気持ちから生まれた病気平癒の蛸。
京都の繁華街である新京極通にある蛸薬師堂 永福寺。その名の通り、蛸を祀(まつ)っているとても珍しい寺院です。その由来は、建長期に遡ります。この寺に、善光という僧がおり、母の看病をしていたのですが、病は一向に良くなりませんでした。そんな時、母は「自分は蛸が好きだったから、蛸を食べれば治るかもしれない」と告げます。善光は僧侶の身で蛸を買うことに躊躇(ちゅうちょ)するも、母のことを思うといてもたってもいられず、箱を持って出かけ、蛸を買って帰りました。この様子を見た町の人々は不審に思い、寺の門前で箱の中を見せるように彼を責めます。善光はこの難を逃れられるよう薬師如来に祈りながら箱を開けると、蛸の足は8軸の経巻となりました。そして、皆が合掌すると、再び蛸の姿となり、光を放って善光の母を照らし、病気はたちまち回復したそうです。以来、蛸薬師如来様と呼ばれ、病気平癒を祈る参拝客が今も多く訪れます。そんな蛸薬師堂には蛸にまつわる授与品が多数あります。写真上の張り子製の願掛け蛸は、病気平癒の願いを込めて奉納すると、願いが叶うといわれています。
写真上/願掛け蛸500円(蛸薬師堂 永福寺☎075・255・3305)。写真中/新京極通のアーケードに突如現れる、蛸薬師堂の境内。写真下/かつて蛸の絵馬を奉納して病気平癒を願う習慣があった。
掲載:BRUTUS#936 (2021年4月15日号)
値段・問い合わせ先などは、発売当時のものです。