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素隠居 みやげもんコレクション281 BRUTUS No.876

みやげもんコレクション 281素隠居

岡山県/倉敷市
文 / 川端正吾

素隠居(小)。うちわの台座付き。3,000円(一草一木亭☎086・422・1651)。

うちわで子供を賢くしてしまう不思議な老夫婦。

岡山県倉敷市にある阿智(あち)神社の例大祭では、御神幸の獅子に付き添うようにして、なんともあやしげな、老夫婦の面をつけた若者が練り歩きます。この老夫婦は「素隠居」と呼ばれ、頭がらっきょうに似ていることから、子供たちは「すいんきょ、らっきょう! くそらっきょう!」などとはやし立てます。すると素隠居は、子供たちを追いかけ回し、持っていたうちわで頭を叩いて回ります。頭を叩かれた子供は、賢く健康な子供に育つといわれています。

この風習の歴史は元禄期にさかのぼり、ある老人が、寄る年波に勝てずに、阿智神社の例祭に参加できなくなった際、自分の代わりに老夫婦の面を作り、若者にかぶらせて代理として参加させたことが始まりといわれています。なぜこの面が素隠居と呼ばれるようになったのか、また、うちわで頭を叩くようになったのか、については諸説あるようです。

素隠居の面は、一草一木亭という工房で作られており、購入することもできます。写真上は、実際に使われているお面より小ぶりな素隠居の玩具で、老夫婦がセットになっています。

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写真上/素隠居(小)。うちわの台座付き。3,000円(一草一木亭☎086・422・1651)。写真中下/例祭での素隠居の様子。泣きだす子供もいるが、親は健康で賢くなってもらうため、頭を出させる。


 

掲載:BRUTUS#876 (2018年9月1日号)
値段・問い合わせ先などは、発売当時のものです。