マガジンワールド

みやげもんコレクション 167 常石張子

広島県/福山市
文 / 川端正吾

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広島に伝わる奔放な作風の張子細工。

広島県の北部には、子供の初節句に土人形を贈ってお祝いをする風習がありました。三次人形と呼ばれる広島の伝統的な土人形で、今も1軒窯元が残っており、作り続けられています。今回ご紹介するのは、この三次人形ではなく、三次人形に倣って明治期に作り始められた「常石張子」です。もともとはお手本とした三次人形同様、土人形だったのですが、作られていた場所が沼隈半島という交通の便があまり良くない場所だったため、輸送するたびに壊れるものが多く出てしまい、張子の製作に変えたのだとか。通常張子は木型の上から紙を張り込んで作ります。ところが、常石張子はもともとの土人形の型を流用しているため、型の内側に紙を張って作るという特殊な方法で製作されます。また、一つの型でシンプルに作れるように極力出っ張る部分を廃した造形となっており、ずんぐりとしたシルエットが特徴です。

2代目の宮本峯一氏の代に、自由奔放な作風で膨大な種類の張子が生み出され、広島を代表する玩具となりました。現在は3代目の宮本義孝氏によって作り伝えられています。

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岡山県倉敷市にある〈日本郷土玩具館〉には2代目・宮本峯一氏による作品が多数展示されており、3代目・義孝氏の作品も販売されている。写真上/猿5,250円。●日本郷土玩具館☎086・422・8058。
岡山県倉敷市にある〈日本郷土玩具館〉には2代目・宮本峯一氏による作品が多数展示されており、3代目・義孝氏の作品も販売されている。写真上/猿5,250円。●日本郷土玩具館☎086・422・8058。



掲載:BRUTUS#762 (2013年9月15日号)
値段・問い合わせ先などは、発売当時のものです。