みやげもんコレクション 175 中湯川人形
福島県/会津若松市
文 / 川端正吾
こけしだけじゃない! 福島では珍しい、土人形の温泉みやげ。
会津若松市郊外にある東山温泉。かつては山形県の上山温泉、湯野浜温泉と並び、奥羽三楽郷と呼ばれた温泉郷です。伊達政宗や上杉景勝など、名だたる武将たちも歴戦の傷を癒やしたのだとか。この名湯のみやげもんとして人気なのが、「中湯川人形」と呼ばれる土人形。東北の温泉郷みやげといえば、“こけし”が真っ先に思い浮かびますし、福島でいえば、三春張り子をはじめとした張り子細工が盛んな土地柄です。そんな中、なぜ東山温泉の名物は、福島では珍しい土人形になったのか。それは、創始者である青柳守彦氏が浅草育ちで、今戸焼の工房が家の近所にあり、小さい頃から土人形の製作に親しんでいたから。氏が会津若松市の山奥に移り住み、製作し始めた人形が温泉みやげとして定着したのです。小ぶりで色鮮やかな人形が多くみやげもん向きですし、300種類以上もある豊富なバリエーションも収集家心をくすぐります。写真上は今年の干支“午”の「来らんしょ」と呼ばれる作品。会津の方言で「ようこそ、いらっしゃい」という意味で、玄関にちょこんと座り、新年の来客を迎えてくれます。
掲載:BRUTUS#770 (2014年2月1日号)
値段・問い合わせ先などは、発売当時のものです。