マガジンワールド

みやげもんコレクション 190 寂光院紙つばめ

愛知県/犬山市
文 / 川端正吾

寂光院紙つばめ

霊山・継鹿尾山に舞い飛ぶ犬山の紙つばめ。

木曽川沿いの継鹿尾山中腹にある寂光院。尾張最古刹として知られ、本尊の千手観音菩薩は日本武尊の作と伝えられています。今回ご紹介する紙つばめは、寂光院の例大祭にて売られていたもので、参拝客たちは、このツバメを“田の害虫を食べてくれる観音様の使い”として、田の畔にたくさん立てて五穀豊穣を祈りました。棒に取り付けられたツバメを風に向けると、ふわりと浮き上がり、尾羽根がくるくると回り、見事に飛翔します。田の畔に沿って並んだ紙つばめが羽をはためかせている姿は、とても趣深い光景だったでしょう。近年は農村でのこうした習慣はすっかりなくなり、純粋な郷土玩具として親しまれていましたが、やがて廃絶。ほかにも、この地域では、古くから、犬山でんでん太鼓や、犬山風車、犬山土人形、犬山太鼓、犬山弾き猿、針綱神社狗……などなど、数え切れないほどの郷土色豊かな玩具が作られ縁日などで売られていましたが、そのほとんどが姿を消していました。近年、こうした故郷の手仕事に注目が集まるようになり、少しずつ復元されており、この紙つばめも見事に復活を遂げています。
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写真上/尾羽根はブリキ製のキャップで留められ風になびくと音をたてて飛ぶ。1,080円。写真下/もう一つの復元玩具「犬山でんでん太鼓」。1,300円。●共にレストラン桃太郎☎0568・61・1576。



掲載:BRUTUS#785 (2014年9月1日号)
値段・問い合わせ先などは、発売当時のものです。