みやげもんコレクション 199 起き姫
福島県/福島市
文 / 川端正吾
良き繭と子宝をもたらしてくれる福島の蚕姫。
カッ! と大きく目を見開く、威圧感満点の福島だるま(写真右)。もともと“悪を睨みつけて追い払う”という魔除けの縁起物だったため、最初から目が入っている珍しいだるまです。顔のまわりは、唐草模様のような水面を昇る龍が描かれ、これには、火防、つまり、火災防止の願いが込められています。さらに、眉毛は鶴に、口ひげは亀になっているという縁起の塊のようなだるまです。
毎年、2月10・11日に福島市の羽黒神社で行われる『信夫三山暁まいり』では、参道の出店に大小様々な福島だるまが並びます。その際はぜひ店先の脇で、控えめに売られている起き上がりにもご注目を。実は、こちらが今回の主役である「起き姫」(写真上)。福島だるまとともに作られている玩具で、かつて養蚕が盛んだったこの地域では、良質な繭ができるように、と神棚に飾りました。また、家族の数より1つ多くの起き姫を買い求め、子宝も祈願したそうです。現在ではこの習慣はなくなってしまいましたが、無病息災の縁起物として残り、元来赤のみだったものが、紅白人形となって、今に伝わっています。
写真大/起き姫 各300円。写真上/厄除けの白河だるま。矢野目だるま、とも呼ばれる。1,800円*7寸(共に渡辺だるま☎024・553・3709)。写真下/起き姫は底部に重りが付いており、起き上がりに。
掲載:BRUTUS#794 (2015年2月15日号)
値段・問い合わせ先などは、発売当時のものです。