マガジンワールド

みやげもんコレクション 210 津山土人形

岡山県/津山市
文 / 川端正吾

津山土人形

菅原道真の一族ゆかりの地で生まれた天神像。

美作国、津山。この地方では、古くから男子の誕生を祝って天神様を贈り、初節句のお祭りをする民俗行事があります。かつて、菅原道真で知られる菅原氏から派生した菅家一統が住んだ地でもあり、そのうちの一家・植月家では、練り土の天神像を希望者に配っていました。そこから、この節句の風習が起こったといわれています。節句に使われた天神像は、“津山のねり天神”として郷土玩具愛好家たちにも親しまれました。土人形のように粘土を焼成せず、泥をそのまま固めただけで作られた素朴な人形です。古くなって壊れた人形は川に流し、自然の土に還します。このねり天神は、現在は残念ながら廃絶してしまいました。

こうした、地元の消えゆく歴史や習俗をモチーフに作品を作っているのが、今回ご紹介する津山土人形。津山における天神文化の面影を今に残しています。現在の作者の妹尾康心氏は、200種を超す多彩な土鈴作品でも知られています。戦後間もなくから約60年の歴史があり、その他の多くの玩具たちが消えゆく中、今も積極的に新作を発表しています。

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写真上/台付天神3,500円(津山土人形妹尾☎0868・22・4532)。写真中/妹尾氏の土鈴の代表的な作品「奴鈴」。写真下/津山のもう一つの代表的な竹細工の玩具「作州牛」。こちらは津山民芸社の作品。


 

掲載:BRUTUS#805 (2015年8月1日号)
値段・問い合わせ先などは、発売当時のものです。