みやげもんコレクション 218 門入道
神奈川県/足柄上郡
文 / 川端正吾
新たな年の門出を病魔や悪魔から守ってくれる山神様。
丹沢湖と丹沢山地に抱かれた町、神奈川県山北町。この山深い山村には、正月に山の神を祀る行事「門入道」が伝わっています。カツ(ヌルデ)の木の皮を、ナタではぎ、そこへ墨で顔を描いた、とても素朴な縁起物。顔の表情は、地区や家によって様々で、険しい表情で疫病や悪魔を家に近づけないように脅かすものが多いですが、逆ににこやかな笑顔で福を招く門入道も稀にあります。共通するのは、みな玄関の左右に門入道を1体ずつお供えし、1対で飾られること。門入道は、家の内と外との境界に立つ守護神であり、かつては、納屋や便所の入口にも備えられたのだとか。
供えられた門入道は「二十日(はつか)の風はあてるな」と言われ、19日までには必ず片づけました。これは、20日には恵比寿様をお迎えするため、怖い顔の門入道がいると福が来なくなってしまうためです。片づけた門入道は、道祖神に集めてどんど焼きで燃やしたり、囲炉裏(いろり)の火で燃やすなどしたそうですが、最近ではカツの木がなかなか伐(き)れなくなってきたため、大事に保管しておき、翌年また使うことが多いそうです。
写真大/門入道(大)2体セット1,000円(へろくり倶楽部☎0465・78・3501)。大サイズは受注販売。写真小/今も手作りされる門入道は、町内の山神様に祀られてから販売される。
掲載:BRUTUS#813 (2015年12月1日号)
値段・問い合わせ先などは、発売当時のものです。