みやげもんコレクション 235 茶の木人形
京都府/宇治市
文 / 川端正吾
将軍家も愛した宇治名物の木彫が復活しました。
江戸後期、宇治の幕府御用茶師であった上林清泉が創作した、茶の木を使った「茶の木人形」。茶摘み姿の女性をモチーフにしていた宇治を代表する郷土玩具です。清泉は茶師としてはもちろん、画筆にも優れ、多くの絵画を残している芸術肌の人でした。彼の人形は、京都町奉行の目に留まり、将軍家に献上されたことから人気となり、大名たちからも注文があいつぎました。明治になるとその流行は一般民衆にも広がって、茶の木は、地面にしっかりと根づき、新芽を次々出すことから、強い生命力の象徴であり、無病息災や子宝祈願の縁起物として愛されるようになります。ところが、戦後はあまり作られなくなってしまい、地元でも茶の木人形の存在を知る人が少なくなってしまいました。
そんな中、約5年前に、地元の木彫家の大岩広生さんが、研究者の方とともに茶の木人形を復活させました。茶の木はとても堅いため、細かな表情まで彫刻刀で彫り込んでいく茶の木人形は高価ですが、顔を筆書きで描いた茶の木こけし人形は、土産物としても手軽に買える価格帯で販売されています。
写真上/茶の木こけし人形。3,300円(通圓本店☎0774・21・2243)。写真中/伝統的な様式の茶の木人形。清泉の作品を復元した。価格は10,000円〜。写真・下/お福がモチーフとなった清泉の復元作品。
掲載:BRUTUS#830 (2016年9月1日号)
値段・問い合わせ先などは、発売当時のものです。