みやげもんコレクション 242 長門張子
山口県/萩市
文 / 川端正吾
玩具収集が高じて、作り始めた張子が、立派な郷土玩具に
山口県の萩で作られている長門張子。もともと、玩具の収集家であった田中勉さんが、自分でも作ってみたくなり、明治期から伝わる熊本の郷土玩具・宇土(うと)張子の阪本カツさんから技術指導を受け、故郷の萩で昭和59(1984)年から始めた玩具です。カツさんは、宇土張子の創始者の父の後を継いで約70年にわたり張子を作り続け、熊本を代表する郷土玩具に育て上げた名人でした。跡継ぎがいなかったため、田中さんはカツさんの製作の様子をつぶさに観察しながらその技術を学んだそうです。カツさんが亡くなった後、一時的に宇土張子は途絶えてしまいますが、田中さんが、古い宇土張子の復元や、オリジナルの作品も精力的に創作し、その姿を伝えてきました。
モチーフは力士や軍馬など明治の風俗物が多く、20種類ほどがあります。かつて集めた明治期までの古紙を手作業で貼り合わせ、ニカワと泥顔料を混ぜた着色料で絵付けを行う伝統的な手法で作られています。熊本の宇土張子も近年、カツさんの縁者の方が復活させ、製作が再開されました。こちらもまたご紹介したいと思います。
写真上/宇土張子からあるモチーフの力士。3,000円。写真中/長門張子らんちゅう。写真下/同じくオリジナルの鷽(うそ)。共に時期により価格が異なります(以上民芸茶屋 長州☎0838・25・0065)。
掲載:BRUTUS#837 (2016年12月15日号)
値段・問い合わせ先などは、発売当時のものです。