縄乗り天神 みやげもんコレクション 253 BRUTUS No.848
みやげもんコレクション 253縄乗り天神
広島県/三次市
文 / 川端正吾
太宰府へと赴く菅原道真の姿を描いた土人形。
三次(みよし)藩祖であった浅野因幡守(いなばのかみ)長治公が、江戸から連れ帰った人形師に歴史上の忠臣孝子たちの人形を作らせ、家臣に分け与えたのが始まりといわれる三次人形。彩色のあとにニカワで仕上げを施すため、独特なツヤがあり、別名「光人形」とも呼ばれる、約350年の歴史を持つ玩具です。この地方では、子供の初節句の際に、健康に育つことを願って、三次人形を贈る風習が今も残っており、人形がその確かな成長を見守ってくれると信じられています。
100を超える豊富な作品群の中から、今回ご紹介するのは「縄乗り天神」という作品。かつて、菅原道真が太宰府へ左遷される際、船で防府(ほうふ)の浜に立ち寄りました。漁師たちはなにかもてなさねばと思いつつも、それははばかられたため、せめて腰を休めてもらおうと、浜にあった漁に使う大きな網を丸めて、その上に腰かけてもらった、という「網乗り天神」の逸話がもとになった天神人形です。その逸話が山間部の地方へと伝わり、網ではなく、稲わらで編んだ縄に乗る天神様へと転化し、豊作を司る神様として信仰を集めるようになりました。
写真上/縄乗り天神4,200円(松本玩具店☎0824・62・3873)。写真中/学問の神様である天神様をモチーフにした人形はバリエーションが豊富。立ち牛乗り天神10,500円。写真下/猫4,725円。
掲載:BRUTUS#848 (2017年6月15日号)
値段・問い合わせ先などは、発売当時のものです。