山姥 みやげもんコレクション 266 BRUTUS No.861
みやげもんコレクション 266山姥
熊本県/天草市
文 / 川端正吾
隠れキリシタンが祈り続けた和製マリア像。
300年以上の長い歴史があると伝わる天草土人形。「つちにんぎょう」ではなく「どろにんぎょう」と読みます。江戸時代の中頃、寺院の屋根瓦の葺(ふ)き替え工事のためやってきた浪人が、そのままこの地に居つき、瓦だけでなく土人形を焼くようになったのが始まり、といわれています。次第に、節句の飾り物として人気を集め、九州の各地に行き渡るほどの人気となりました。
日本各地に伝わる土人形と同様に、京都伏見人形の影響を受けていますが、佐賀の弓野人形や、福岡の博多人形でも修業を積んでおり、モチーフや絵付けにはそれらの影響も色濃く残っています。
その中でも、代表的な作品とされるのがこの「山姥」です。天草といえば、隠れキリシタンが数多くいた地域。キリスト教が禁じられていた時代、この山姥はマリア像として、ひそかに祈られていました。民衆には、イエスよりも、救済と慈愛の象徴であるマリアが信仰の対象として土着化することが多く、もともとは子供の人形玩具であった山姥に、マリアの姿を重ねていたそうです。
写真上/山姥(大)6,000円(天草土人形保存会☎090・3328・0678)。写真中・下/天草土人形は戦後廃絶してしまったが、近年、保存会に復元され、製作が再開された。絵付け体験会なども行われている。
掲載:BRUTUS#861 (2018年1月1・15日号)
値段・問い合わせ先などは、発売当時のものです。