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お願い狛犬 みやげもんコレクション299 BRUTUS No.894

みやげもんコレクション 299お願い狛犬

愛知県/瀬戸市
文 / 川端正吾

お願い狛犬。1,000円*1対(深川神社☎0561・82・2764)。

焼き物の里・瀬戸を作った陶祖による狛犬の縁起物。

愛知県瀬戸市にある深川神社には、瀬戸の焼き物の祖である陶祖(とうそ)・加藤四郎左衛門景正を祀(まつ)る「陶彦社(すえひこしゃ)」があります。加藤四郎左衛門は、もともと京都市南部で土器作りをしていましたが、高麗(こうらい)の焼き物を収集して焼成法を研究した後、道元禅師に随行して宋に渡り、製陶の秘術を学びました。帰国後は、焼き物に適した良質な粘土を探し求めて全国行脚し、その旅の途中に立ち寄った深川神社で「神社より巽(たつみ)の方角、祖母懐(そぼかい)の地に良土がある」という神のお告げを受け、質の良い木節粘土(きぶしねんど)を見つけたと伝わっています。以来、瀬戸に窯を築き、瀬戸の窯業(ようぎょう)の始祖となりました。深川神社には、加藤四郎左衛門がお告げに感謝して奉納したと伝わる狛犬も残されており、国の重要文化財となっています。

この狛犬は「お願い狛犬」という授与品のモチーフともなっています。願い事を付属している「お願い用箋(ようせん)」に書き、狛犬の底から中に入れて封をします。1対のうち一つは神社に預け、もう一つは自宅に置いておくと、その願いは叶うのだとか。境内には奉納された狛犬がずらりと並んでいます。

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写真上/お願い狛犬。1,000円*1対(深川神社☎0561・82・2764)。写真中/加藤四郎左衛門の作と伝えられる狛犬。阿吽(あうん)1対あったが、現在は吽形の狛犬のみが伝わる。写真下/深川神社の本殿。


 

掲載:BRUTUS#894 (2019年6月15日号)
値段・問い合わせ先などは、発売当時のものです。