えん結びの糸 みやげもんコレクション314 BRUTUS No.909
みやげもんコレクション 314えん結びの糸
和歌山県/東牟婁郡
文 / 川端正吾
熊野三山に鎮座する結宮の縁結びの糸。
那智御滝を望む、標高約400mの山中に鎮座する熊野那智大社。もともとは滝のすぐそばに立っていましたが、仁徳天皇の治世に少し離れた現在の場所に遷(うつ)されたといわれています。熊野速玉大社・熊野本宮大社とともに、熊野三山と呼ばれ、全国の熊野信仰の中心となっており、毎年多くの参拝客が訪れています。そんな熊野那智大社の主祭神は熊野夫須美大神(くまのふすみのおおかみ)。伊弉冉尊(いざなみのみこと)という名前の方が馴染みがあるかもしれません。万物の生成と成長を司(つかさど)る神様です。「夫須美」は、「むすび」に通じることから、熊野那智大社は「結宮」とも呼ばれるようになりました。そんな別名から、様々な願いを結んでくれる縁結びの神様としても信仰を集めるようにもなりました。
その熊野那智大社で授与されているのがこちらの「えん結びの糸」。糸雛があしらわれた包みを開けると、紅白の糸が入っています。この糸を神前に供えたり、衣服に縫って祈ると、願いが叶うそうです。意中の相手がいる場合は、紐を固く結んで相手の懐にしのばせ、祈ることで、ご縁を引き寄せてくれるといわれています。
写真上/えん結びの糸(熊野那智大社☎0735・55・0321)。写真中/熊野夫須美大神を祀(まつ)る本殿。写真下/熊野の神のお使いである八咫烏(やたがらす)が祀られている御縣彦社(みあがたひこしゃ)。こちらも、熊野那智大社境内にある。
掲載:BRUTUS#909 (2020年2月15日号)
値段・問い合わせ先などは、発売当時のものです。