ふぐ乗り大黒 みやげもんコレクション318 BRUTUS No.914
みやげもんコレクション 318ふぐ乗り大黒
長野県/中野市
文 / 川端正吾
古くから人形作りが盛んな中野の福にあたる大黒様。
長野県中野市には、古くから伝統的な土人形が伝わっています。この中野の土人形には、江戸末期から奈良家が作り伝えている京都の伏見人形をもとにした「中野人形」と、明治期より愛知・三河の瓦職人が始めた「立ヶ花人形」の2系統があり、総称として「中野土人形」と呼ばれます。こうした由来の異なる2つの土人形が、同じ地域で作り伝えられていることはとても珍しいケースです。今回ご紹介するのは、奈良家の中野人形。初代奈良栄吉が、京都から中野に人形師を招いて制作方法を習ったのが起源といわれています。そのため、伏見人形の型が多いですが、近年は奈良家オリジナルの作品も増えています。こうした人形は、中野ひな市で販売されます。このひな市も江戸末期から続くもので、奈良家と西原家の人形の展示即売会が行われます。毎年長蛇の列となり、抽選で購入の順番が決定。このふぐ乗り大黒はとても人気で、抽選で早い順番を引き当てないとなかなか購入できない、中野人形の看板のような存在です。今年のひな市は中止となりましたが、何らかの形で販売を検討しているそう。
写真上/ふぐ乗り大黒。15,000円。毎年、中野ひな市にて販売。写真中/人形の体高は一番小さいものでも30㎝程度ある。背中には松が描かれる。写真下/ふぐは「ふく」ともいわれ、縁起が良い。
掲載:BRUTUS#913 (2020年4月1日号)
値段・問い合わせ先などは、発売当時のものです。