鰻土鈴 みやげもんコレクション339 BRUTUS No.934
みやげもんコレクション 339鰻土鈴
京都府/京都市
文 / 川端正吾
全国でも珍しい神の使者である鰻を祀る神社。
京都市東山区にある三嶋神社は、全国でも珍しい「鰻(うなぎ)」を祀(まつ)る神社です。こちらの主神である大山祇大神(おおやまづみのおおかみ)は、山の神ですが、別名を「和多志大神」とも呼ばれ、この「和多」とは海を指すことから、山海両方を司(つかさど)る神様とされています。そんな大山祇大神の神使が「鰻」であることから、三嶋神社に祈願した人々は鰻を食べることが禁じられる「鰻の禁食信仰」が今も残っています。
三嶋神社の氏子をはじめ、崇敬する信者は神使の鰻を食べてはいけないとされ、さらに「鯰(なまず)」も禁食の対象となっており、皮膚のぬめりが同じであることや、体の長い魚であることから、鰻同様と見られていたようです。この鰻の禁食は、祈願が成就したのちに鰻を神前に供え、かつて神社の北面を流れていた音羽川へと放生することで解かれたそうですが、現在は音羽川が枯水となってしまったため、代わりに神前に絵馬を奉納する形式になっています。
三嶋神社の本宮には、今も鰻の絵馬がびっしり。鰻があしらわれた授与品はさまざまにあり、素焼きに素朴な色付けがされた土鈴もとても魅力的です。
写真上/鰻土鈴3,000円(三嶋神社☎075・531・5012)。写真中/住宅街の中にひっそりと佇む本宮。祈願所は同じ東山区の瀧尾神社の境内にある。写真下/境内にびっしりと並ぶ鰻の絵馬。
掲載:BRUTUS#934 (2021年3月15日号)
値段・問い合わせ先などは、発売当時のものです。