住宅は、生き物だ。 Editor’s Voice No.203
Editor’s Voice
住宅は、生き物だ。
今回撮影をさせて頂いた美しい住宅を通じて、あらためて「住宅は生き物だ」と感じました。表紙になったtupera tuperaの新しい京都の家では、まるでライブペインティングのように客間の襖に突板で壁画を製作していく様子を撮影させて頂くことができました。NEW LIGHT POTTERYの生駒山の家では、気に入った家具がでてくるごとに仲間に加え、暮らしの中で居心地のいい場所が分かるとより使いやすいようにマイナーチェンジを加えている、と話してくれました。
木工作家の高山英樹さんの家も、自ら土地を馴らし、基礎を打ち、完成した家も使ってみて改善点があるごとに修繕して来たといいます。キュレーターの徳田佳世さんの京都にある自宅兼ギャラリーは、企画展の内容によって、空間や集まる人が移り変わる、サロンのような場所になっています。
正力松太郎の曾孫にあたる塚越暁さんが住み継いだ家も、長らく住み手はいなかったそうですが、細やかに手を加えたことで、見事に息を吹き返しました。
当然のことですが、住み手によって「理想の家」はまったく異なります。自らの想いや考えを込めた家を目指すことは「理想の家」を手に入れるための、はじめの一歩なのでしょう。でも、本当に住みたい家の理想を追求していくうちに、住み手の想いや気分は、変わっていくもの。だから、「理想の家」は、常に生き物のように変化し進化していくのかもしれませんね。
特集担当編集/奥村健一