マガジンワールド

心をざわつかせるお店たち。 Editor’s Voice No.232

Editor’s Voice
心をざわつかせるお店たち。

自分の理想の暮らしに必要なものは大体わかっているし、購入先も検討がつくと、正直、たかをくくっていました。
が、取材を始めてみると、その思惑はいきなり外れました。
 
浅草橋の古道具店〈白日〉で見つけたのは、土に埋まっていた大理石の球体だし、この春にオープンした青山の〈NICK WHITE〉では、ミッドセンチュリーの家具を紹介されると思いきや、まず出てきたのは、チェコのビニール人形(もちろん良質なミッドセンチュリーの家具もありますが)。
はたまた、浅草公会堂の前にある古道具店〈東京蛍堂〉は、大正時代にあった食堂を改装したお店で、店内に入るだけで軽い衝撃を受けます(訳は行くとわかります)。

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古道具店〈東京蛍堂〉の半地下。大正時代にあった大衆食堂〈野口食堂〉を店主が自ら改装した。

その他にも、ポストモダンの家具をリメイクしている〈リヒト〉や、突如、群馬県高崎に倉庫を借りてお店を開いた〈ジャンティーク 内田商店〉など、立地や内装、置いてあるものが自分の想像を超えてくるお店ばかり。

そんなお店で買い物をすると「これを自分の暮らしにどう取り入れれば?」と戸惑うことも多々あります。すると、今回、登場するスタイリストの長谷川昭雄さんがこんなこと言ってました。

「正直どう扱っていいかわからないものを見たときに、心のどこかで美しいと思ったり、逆に価値を見出せない自分に不安を覚えたりする。それは建物の雰囲気や話し方から溢れ出る何かがそうさせているんだと思う(中略) 僕は物屋は物ではなく別のなにかを売っていると思っている……(続く)」

まさに、それ。今回登場する83軒のショップは、なにかと心をざわつかせてきます。
でも、だからこそ、買い物に行くのが面白い。

より安い値段で買うことだけが“良い買い物”なのではなく、思い入れが異常に強い店主から買ったり、一度は迷わないと辿り着けないようなお店で買うことこそが“良い買い物”なのかもしれない、と改めて思いました。

先日、江東区佐賀にオープンした〈ten〉なんて、水天宮駅からお店に向かう道中で満足度はすでに80パーセントに……。あとは行ってのお楽しみ!

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浅草橋の〈白日〉で見つけた球体2つ。左は土に埋まっていた大理石の球体で、右は花火の玉皮をつくるときに用いられる木製の球体。「これは僕の理想の暮らしに必要なのか」という自問自答を与えてくれる店こそ、刺激的なのだと気がつく。
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水天宮駅から隅田大橋を渡ったところにある〈ten〉。店内に川を眺めるためのスペースがあるので、5分ほど座ってみてください。買い物をする以前に、ただ時間を過ごすだけで「あぁ、今日は出かけてよかった」と思うはずです。
 
写真/白川青史、永禮賢(ten)
担当編集/宮本賢
 
CASA BRUTUS No. 232

理想の暮らしが買える店

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