うつわは、日々の時間の流れと景色を変えてくれる。 Editor’s Voice No.220
Editor’s Voice
うつわは、日々の時間の流れと景色を変えてくれる。
連載「古今東西 かしゆか商店」の取材中、かしゆかさんが「好きな作家の個展があると、早朝から並ぶことがあるんです」とおっしゃっているのを小耳にはさみました。それ以来、並んででも手に入れたくなるうつわには、いったいどんな魅力があるんだろうと、ずっと気になっていました。今回の特集は、そんな小さな疑問をきっかけに生まれたものです。
その秘密を探るべく、うつわ作家15人の工房と住まいを訪れ、うつわのある暮らしや作り手の想いを取材させて頂いたのですが、そこには、ある共通した「豊かさ」がありました。
日々の献立を考え、それに合ううつわを選ぶ時間。お気に入りのうつわに生けられた草花の空間で過ごす時間。日々忙しく過ごしているとつい見過ごしがちなモノの価値や、ひと手間かけることで変わる風景を、うつわ作家の暮らしやその言葉から、感じることができました。
取材後、その暮らしぶりに感化され、いくつかのうつわを買いました。そして実際に使っているのですが、その幸福感たるや、なににも変えがたい価値があります。
うつわ好きのかたが、並んででもうつわを買いたくなってしまうのは、モノとしてのうつわの魅力はもちろん、そのうつわを使うことで日々の時間や景色が変わる、その豊かさを味わってしまったからなのかもしれません。ぜひこの特集の中から、お気に入りのうつわと、新しい日々の風景を、見つけて頂ければうれしいです。
特集担当編集/奥村健一