みやげもんコレクション 169 吉備津達磨
岡山県/岡山市
文 / 川端正吾
生まれくる子の安全を祈った備前の小達磨。
桃太郎伝説で知られる、岡山市の吉備津神社。備前の一の宮として栄えたこの神社の参道には、かつて様々な玩具を売る店が立ち並びました。今ではそのほとんどが廃絶してしまいましたが、個性豊かだった吉備津の古玩を惜しみ、郷土玩具研究家の東隆志氏がコツコツと復元を行っています。この吉備津達磨もその一つ。向かって左から、父・子・母の3体セットになっており、一番大きなお父さん達磨でも高さ4cm程度のとても小さくて可愛らしい土人形です。ひときわ目を引くのが中央の子供達磨。顔は中央に赤丸が描かれるのみ、というミステリアスな面持ち。これは、これから生まれてくるであろう子供を表しているのだとか。誕生前の子供を象った達磨というのは、全国的に見てもほとんど例がなく、とても珍しいもの。この3体を並べて飾ることで、縁結びや子授かり、夫婦円満、安産などを願いました。
吉備津達磨のほか、以前ご紹介した「吉備津さる」も東氏の復元の作品。造形は残された古い作品から、色彩は古い版画を参考に、岡山の郷土玩具を蘇らせ続けています。
掲載:BRUTUS#764 (2013年10月15日号)
値段・問い合わせ先などは、発売当時のものです。