みやげもんコレクション 182 ふく凧
山口県/下関市
文 / 川端正吾
大空に舞い“ふく”をもたらす下関の河豚。
山口県下関市の安岡町に伝わる河豚の形をした凧、「ふく凧」。安岡町は古くから凧揚げが盛んな地区で、約50年ほど前に地元の凧愛好家・安本実氏が下関の特産品である河豚をモチーフにした凧を作ったところ、全国から注文が殺到。大空に舞って人々に福をもたらし、部屋に飾っても福を招く、として安岡を代表する郷土玩具に成長しました。口の部分がくりぬかれたユニークな表情の丸凧です。この穴はただの飾りでなく、ここを風が吹き抜けることで、バランスをとるのが難しい丸凧が安定するように考えられたもの。下関では、ほかにも美術品収集家として知られた河村幸次郎氏が考案した「ふく笛」など、様々な河豚の玩具がありましたが、その多くは廃絶してしまいました。そんな中、ふく凧は安岡ふく凧会の若松重行氏が技術を受け継いで製作を続けています。
関東の方では河豚を「ふぐ」と呼ぶのが一般的ですが、西日本では濁点をつけずに「ふく」と呼ばれます。「ふぐ」は不遇につながる、だとか、「ふく」は福となる、などの縁起をかついで、こうした呼び方となったといわれています。
町の公民館前には、「ふく凧発祥の地」を掲げた看板と、ふく凧のモニュメントが。イベントなどでは、このような連凧も作られる。写真大/ふく凧3,500円。●若松重行☎090・9410・7193。
掲載:BRUTUS#777 (2014年5月15日号)
値段・問い合わせ先などは、発売当時のものです。