みやげもんコレクション 196 スイトン
岡山県/真庭市
文 / 川端正吾
悪だくみをするとスイーと飛んでくる、一本足の怪物。
串田孫一『わたしの博物誌』で紹介されて知られるようになった、岡山・蒜山の怪物「スイトン」。彼は蒜山のロッジで聞いた怪物の話をこう紹介していました。「この蒜山にはスイトンという恐ろしいものがいて、人間を引きさいて食うという話をきいた。どうしてスイトンなどという名前がついたのだろうかと思ったら、スイーと飛んで来てトンと一歩足で立つからだという説明である。こういう話になると私は体を乗り出して、子どものころの、『それから? それから?』という表情になるらしい。それからスイトンは人間が考えたり思ったりしていることがみんな分かるのである」
そんな怪物は、いまや街のシンボルとなっており、街の至るところにモニュメントが建てられています。その姿は、どこか南洋系のエキゾティックな面持ちで、なんとも妖しげ。写真のような木彫人形にもなっていて、その由来書にも串田孫一の言葉が添えてありました。「もし悪いことをたくらんだり他人に迷惑をかけたりした者は『粋呑』にたちまち引裂かれて食われてしまうという。だから、蒜山には悪人がいない」
写真大/木彫りスイトン。600円(山陰物産☎0859・39・8811)。写真上/蒜山の町にはスイトンを象ったモニュメントが至るところに立ち並ぶ。橋の欄干までスイトン。写真下/鉛筆立てまで登場。
掲載:BRUTUS#791 (2014年12月15日号)
値段・問い合わせ先などは、発売当時のものです。