みやげもんコレクション 228 火防獅子
栃木県/栃木市
文 / 川端正吾
戦火から神社のご神体を守った阿吽(あうん)の獅子。
栃木の桜の名所として知られる、太平山神社。神社の社宝、「火防獅子」をモチーフにした縁起物がこの土鈴です。天正12(1584)年に当時の領主、皆川山城守広照が、北条氏政と戦をした際、太平山も戦場となり、大きな山火事が起こりました。神社にも火の手が回り、本殿を含むほとんどの建物が火に包まれる中、突然、獅子の像が天高く舞い上がり雨を降らせ、神社のご神体を守ったと伝えられています。また、この雨により、戦いにまぎれて悪事を働いていた野盗たちも追い払われたのだとか。以来、火防と盗難からの守護として信仰されてきました。この土鈴はその御利益をいただける縁起物として授与されていましたが、近年、製作が途絶えていました。しかし、6年前、境内の星宮改修を記念して復元され、授与が再開されています。一対となっており、神棚のほか、台所などの火をよく使う場所に置きます。また、神社の土鈴だけでなく、地元の彫刻家の方が考案した木彫りの火防獅子も郷土玩具として有名です。栃木は、かつて下駄の一大産地だったので、その端材を使って作られていました。
写真上/火防獅子の土鈴1,500円(太平山神社☎0282・22・0227)。写真中/太平山神社の本殿。写真下/火防獅子が安置されている星宮の内部。向かって右手の格子窓の中に納められている。
掲載:BRUTUS#823 (2016年5月15日号)
値段・問い合わせ先などは、発売当時のものです。