みやげもんコレクション 234 松江姉様
島根県/松江市
文 / 川端正吾
小泉八雲も愛した、恥じらいの表情が艶やかな紙人形。
縮緬紙(ちりめんがみ)で様々な髪形を作り、千代紙の衣装を着せ、ままごとの人形として使われた人形「姉様人形」。もともとは江戸城の奥女中たちが、余暇の時間を使って作っていたものです。和紙が庶民のあいだに広まると、流行の髪形をした姉様人形がこぞって作られるようになりました。この江戸での流行が、参勤交代などで日本各地に伝わり、作られるようになりました。それぞれにご当地の特色などを取り込み、独自の文化となって根づいています。
今回ご紹介するのは島根県松江市に伝わる「松江姉様」。江戸から伝わった姉様人形を松江藩の御殿女中たちが作り始めたもの。昭和10(1935)年頃までは子供のままごと玩具として人気でしたが現在は伝統工芸品として伝承されています。姉様人形は髪形の特徴がわかりやすい後ろ姿を鑑賞することが多く、顔は省略されるのが一般的ですが、松江の姉様は切れ長の目に、おちょぼ口、頬も紅で染められているのが特徴。あの小泉八雲もその表情を愛し「瓜実(うりざね)顔に切長な目もとがほんのりとうるんで、羞(はじ)らうようにうつむいて……」と書き残しています。
写真上/姉様人形1,620円(島根県物産観光館☎0852・22・5758)。写真中・下/島根にはほかにも紙を使った玩具が多く伝わる。上はちぎり絵で図柄があしらわれる松江和紙てまり、下はじょうき。
掲載:BRUTUS#829 (2016年8月15日号)
値段・問い合わせ先などは、発売当時のものです。