隅田川七福神の宝舟 みやげもんコレクション289 BRUTUS No.884
みやげもんコレクション 289隅田川七福神の宝舟
東京都/墨田区
文 / 川端正吾
風流文雅の通人たちが始めた、七福神巡りの趣向。
今の墨田区の向島周辺は、江戸時代より、市中から日帰りで行ける行楽地として、親しまれてきました。文人墨客(ぶんじんぼっかく)と呼ばれる風流文雅(ふうりゅうぶんが)の通人たちも、大勢が百花園に集ったそうです。その百花園には、福禄寿(ふくろくじゅ)の陶像があり、ある日、集った文人がその福禄寿にちなんだ正月の楽しみ事を考えよう、と提案します。隅田村多聞寺(たもんじ)の本尊は毘沙門天(びしゃもんてん)、須崎村の長命寺には弁財天があることがわかると、残りの4柱を探して、隅田川七福神としよう! と盛り上がったのです。小梅村の三囲(みめぐり)稲荷に恵比寿と大國の祠(ほこら)が、須崎村の弘福寺には布袋和尚の木像が見つかり、残るは寿老人(じゅろうじん)だけとなりますが、これがどうにも見つかりません。そこで、寺島村の鎮守白鬚明神(しらひげみょうじん)を「白鬚というからには、ご老体のお姿であろうから、寿老人には打ってつけだ!」といういかにも江戸人らしい機知を働かせます。こうして揃った6ヵ所を巡りながら、それぞれの御分体である像を1体ずつ受け取り、宝舟に載せていく、という趣向が生まれました。現在も元日から7日まで各所で授与されており、今年(平成30年)で200周年です。
写真上/隅田川七福神の宝舟。舟1,500円、御分体各500円(白鬚神社☎03・3611・2750)。写真中・下/七福神が揃った状態での授与はされておらず、6ヵ所を巡り1体ずつ増やしていく。
掲載:BRUTUS#884 (2019年1月1・15日号)
値段・問い合わせ先などは、発売当時のものです。