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八角木守 みやげもんコレクション342 BRUTUS No.937

みやげもんコレクション 342八角木守

京都府/京都市
文 / 川端正吾

八角木守1,500円(八坂神社☎075・561・6155)。

素戔嗚尊に守られし一族の厄除け護符。

日本各地に広まっている民間信仰である「蘇民将来」。素戔嗚尊(すさのおのみこと)にまつわる信仰で、「蘇民将来子孫也」と記した札を玄関に掲げ、疫病守護を願います。祇園祭で有名な京都の八坂神社も、素戔嗚尊をお祀(まつ)りしていることから、この蘇民将来の護符が授与されています。

蘇民将来とは、巨旦(こたん)将来との兄弟で、兄の蘇民はとても貧乏でしたが、弟の巨旦はとても裕福でした。そんな2人の村に、南海を旅していた素戔嗚尊がやってきて、巨旦の家で一夜の宿を求めました。ところがケチな巨旦はそれを断ってしまいます。素戔嗚尊は、次に蘇民の家で宿を求めると、蘇民は貧しいながらも栗飯を炊いて、精いっぱいもてなしました。その蘇民の真心を喜んだ素戔嗚尊は、「疫病が流行ったら、“蘇民将来子孫也”と書かれた護符を持つ者は、疫病から逃れられるだろう」と約束しました。

その故事にちなみ、祇園祭に参加する氏子はみな「蘇民将来子孫也」の護符をつけて厄除けを祈ります。また、家には、八角形の木製の「八角木守」を、玄関などに飾り、無病息災を祈る習慣も残っています。

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写真上/八角木守1,500円(八坂神社☎075・561・6155)。写真中/毎年7月に行われる祇園祭の神幸の様子。写真下/拝殿を大屋根で覆う「祇園造」の本殿は、昨年、国宝に指定された。


 

掲載:BRUTUS#937 (2021年5月1日号)
値段・問い合わせ先などは、発売当時のものです。