御槍 みやげもんコレクション352 BRUTUS No.947
みやげもんコレクション 352御槍
東京都/北区
文 / 川端正吾
春日局が幼き家光公のことを思い奉納した槍。
樹齢600年ともいわれる有名な大イチョウが境内にあることで知られる王子神社。この神社では3代将軍・徳川家光公にまつわる「槍」の逸話が残されています。家光公が幼少の頃、乳母の春日局(かすがのつぼね)が竹千代(家光の幼名)の病弱と将軍の世継ぎ問題に心を痛め、王子神社に槍を奉納したところ、竹千代の健康と大成が見事に叶った、というものです。その後、庶民たちの間でも、神前に小さな槍を置いて、祈願すると悪事災難を免れると信じられるようになります。以来、王子神社の例大祭では、神前で祈願し、納めてある小さな槍のうち一つを持ち帰って家に祀(まつ)り、翌年の例大祭の日にそれを返納し、別の槍をまた一つ持ち帰って家に祀る、という神事が行われるようになりました。これにより、満願成就や、盗難除け、火難除けの御利益があると信じられたそうです。
現在はこうした神前での槍の交換は行われていませんが、当時の小さな槍は「御槍」と呼ばれる授与品となって、例大祭の日をはじめ通年授与されています。同じく授かると満願成就の御利益をいただくことができるといわれています。
写真上/御槍(王子神社☎03・3907・7808)。毎年8月上旬に行われる例大祭をはじめ、通年授与される。写真中/例大祭『槍祭』の田楽舞の様子。写真下/12月6日には東京で最後の酉の市も。
掲載:BRUTUS#947 (2021年10月1日号)
値段・問い合わせ先などは、発売当時のものです。