From Editors No. 197 フロム エディターズ
特集内容
ART | HOT LIST 100
見逃せないアート100
日本国内では「瀬戸内国際芸術祭」をはじめとしたアートイベントが目白押し。
海外では6月ロンドンに待望の<テート・モダン新館>がオープン、パリではあの<フォンダシオン ルイ・ヴィトン>が現代美術作家により、カラフルな色に大変身するなど、アートの話題に事欠きません。
そこで今回は、12のカテゴリー別にこの夏ヴァカンスで訪れ体感したいアートスポットを紹介。演劇・デジタルアート~絶対にマークすべき展覧会まで。カーサ独自の視点で「ベスト100」をセレクトしてみました。
12のカテゴリー別に「見逃せないアート100」を紹介します。
01:World Heritage [世界遺産]
02:Art Festival [芸術祭]
03:Travel [旅]
04:Land Art [ランドアート]
05:Installation [インスタレーション]
06:Digital Art [デジタルアート]
07:Museum [ミュージアム]
08:Artist [現代美術作家]
09:Performance [パフォーマンス]
10:Gallery [ギャラリー]
11:Exhibition [展覧会]
12:Church [教会&チャペル]
第二特集
建築界のオリンピック&万博!
ヴェネチアビエンアーレ国際建築展を見たか。
第三特集
スターシェフ集結。一夜限りの夢のディナー。
ポップアップレストラン開店!
Editor’s Voice
ル・コルビュジエ名建築の仕掛人がつくった、
仏アルプスの知られざるアートサイトへ。
日本からも唯一のコルビュジエ作品として知られる上野の<国立西洋美術館>も一緒に登録される予定で、そうなると、東京初の世界遺産が誕生することとなり、世間から注目されること間違いなしです。
私は今まで3回のコルビュジエ特集と、2冊のコルビュジエ増刊号(ムック)をカーサでつくってきたのでちょっとマニアックな部分もあるのですが、コルビュジエに関係のある建築で、ずっとカーサ誌面で紹介したいと思ってきた教会がありました。今回ここで話をするフランス・アルプスにある<プラトー・ダッシーの教会>です。
この教会には一流アーティストが関わっていて、その名を挙げるとジョルジュ・ルオー、アンリ・マティス、マルク・シャガール、ピエール・ボナール、フェルナン・レジェなどなど。教会の建物内外に贅沢なほど彼らの芸術作品がインストールされ、まるで美術館のようです。
でもなぜアルプスの山奥に、このようなミュージアムのような教会がつくられたのか不思議ですよね。そこにはある謎の司祭の存在がありました。その名は、マリー=アラン・クチュリエ神父。ル・コルビュジエに<ロンシャンの礼拝堂>や<ラ・トゥーレット修道院>などの傑作をつくらせた名建築、影の仕掛人です。
彼は、ル・コルビュジエに<ロンシャンの礼拝堂>や<ラ・トゥーレット修道院>を依頼する以前、1938年(第二次大戦前夜)にこの教会の建設を始めました。
クチュリエ神父は、カトリック教会が近代以前はそうであったように、宗教芸術に一流の芸術(家)を取り入れるべきだという思想を持っていました。「アール・サクレ」(聖なる芸術)という雑誌を発行し、カトリック教会内に一流の芸術を取り入れる運動も起しました。そしてその最初期に生まれたのが、このアルプスの<プラトー・ダッシーの教会>だったのです。いわば、「20世紀の現代美術」×「建築」のコラボレーションの原点ともいえます。
細かいストーリーはカーサ誌面を見ていただくとして、この教会ははっきり言ってすごいです。でも歴史に埋もれ、その存在自体があまり知られていないというのが現実です。
今回の「見逃せないアート100」特集の001番=国立西洋美術館、099&100番は、ル・コルビュジエにロンシャン&ラ・トゥーレットをつくらせたクチュリエ神父が関わった2つの建築を紹介し、共にル・コルビュジエと関連のある場所を紹介しています。美術館と教会、そしてそれぞれの歴史的背景は違いますが、願わくは現地まで脚を運んでいただき、ぜひともその凄さをご自分の目で確かめてみられることをオススメします。
芸術と建築は、体験してみて初めて良さがわかるものですから。