昭和の名作住宅、令和の時代に住み継がれる。 Editor’s Voice No.230
Editor’s Voice
昭和の名作住宅、令和の時代に住み継がれる。
新年1月2日や天皇誕生日の一般参賀でおなじみの皇居新宮殿の長和殿。日本人にとって親しみのあるこの建物の基本設計にも関わった建築家・吉村順三は、奈良国立博物館新館やロックフェラー邸、天一美術館など、数々の名建築を残していますが、なんといっても、昭和の時代に日本国内に建てられた、数々の美しい木造住宅こそが、住宅建築の歴史においてとりわけ光を放っています。そんな吉村の設計の住宅は、デザインに造形の深いクリエイターたちから愛され、今なお住み継がれている家も多く、カーサブルータスでも何度か取り上げて来ました。昨年、おなじく建築家・吉村順三に憧れを抱いていたYAECAのデザイナーの服部哲弘さんが、1974年鎌倉に竣工した吉村設計の家をリノベーションするという話を聞き、この特集をつくることが決まりました。
服部さんの考える「家が建った頃の姿に戻す」というリノベーションの考えは、華美ではないけれど丁寧に作られた日本らしい住宅への敬意を感じ、美しい暮らしのための家の在り方を再定義していて、リノベーションの考えを見つめ直す、とてもいいきっかけになりました。新元号の名前の由来には、伝統と新しさの両方が込められているそうですが、これからの家づくりにも、伝統を残しつつ、変えるものは変える、そんな考え方が根付いていくのかもしれません。
特集担当・奥村健一