マガジンワールド

インテリアに“とりあえず”はダメです Editor’s Voice No.211

Editor’s Voice
インテリアに“とりあえず”はダメです。

インテリアスタイリストの礎を築いた岩立通子さんはこう言ってました。とりあえずのつもりがかなり長い時間、部屋の雰囲気を変えてしまうからです。妥協をすると、それが日常になるわけです。至極名言です。たしかに、そのとおりで、“とりあえず”で買ったつもりが、気がつくと10年なんてことは、ほんとうにざらです。むしろ普通ですよね。改めて自分の部屋の中を見渡してみると、置き時計、CDラック、ブランケット、旅先で買ったチープな民芸品、フライパンにワイングラス‥‥。あるわあるわ、“とりあえず”の熟成モノ。洋服なら流行から乗り遅れたモノは着ることもなくなるので、とりあえずでもダメージは少なめですが、部屋の中にあるものは、ほんとうにしぶといです。

岩立さんに言われて以来、いまでもその教えを守り続けてますが、今度は慎重になりすぎる余り、モノが買えなくなるわ、ポスターは貼れなくなるわ、額すら飾れません。部屋作りって難しいものです。 

今回の特集は、そんな“とりあえず”もちょっとした魔法でスペースが劇的に変わるメソッドを集めました。撮影を重ねると、モノ選びの大切さもそうですが、“とりあえず”の対処法がそこかしこにありました。岩立さんの薫陶を受けた作原文子さんはファッションルールともいえる、高いモノとチープなモノを組み合わせ、超絶アイテムで“とりあえず”を粉砕する方法。

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SOLSOの斎藤太一さんは「成長」という文脈で“とりあえず”に対処しました。植物が成長することで、自分のスペースに変化を加える。DIYやセルフビルドもそうですよね。進化することで、“とりあえず”も変わっていきます。

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スイムスーツデパートメントの豪古隆洋さんの「ハッピーデコレーション」をみると、圧倒的な物量で“とりあえず”を薄める。うーん、その手があったか! 熊谷隆志さんの「ウォールハンギング」もまさに同じです。新しい壁が欲しくなるほど過剰な装飾で“とりあえず”は、あっという間に物量に凌駕されちゃうもんなんです。センスのいい部屋というのは総じて、モノが多いんです。ここ最近、取材を重ねてつくづく思うのです。

そんなヒントと魔法ってたくさんあるんですね。“とりあえず”みなさんの参考になればとてもうれしいです。

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特集担当編集/古谷昭弘
CASA BRUTUS No. 211

インテリア改造ワークショップ/温泉天国 台湾

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