ライフスタイルや施主の想いが 家のカタチを決める。 Editor’s Voice No.215
Editor’s Voice
ライフスタイルや施主の想いが
家のカタチを決める。
理想の家ってどんな家だろう? そんな問いかけから始まったこの特集。表紙に選ばれたのは、岐阜で作陶する陶芸家、吉田次朗さんの家でした。回廊型の住宅兼アトリエですが、自らの作品が中庭に置かれ、料理が盛り付けられているような趣が、まるで器のように感じられました。また、インテリアからも、静かに流れる時間や、わずかに差し込む光の陰影の美しさ、光の加減によって違いを楽しむことができる塗装の風合いなど、ご自身がつくる器との共通点がいくつもあり、つくづく、家には施主の考えや想いが映し出されているんだなと思いました。
そのほかに、個人的に惹かれたのは、隈研吾建築都市設計事務所による新潟県の長岡にある住宅。テント地を使った大胆な屋根がひと際目をひく住宅ですが、施主がテント地を扱う仕事をしており、素材のポテンシャルに魅せられていることや、豪雪地域のため雪落としの勾配が必要なことから、このような膜構造の住宅が生まれたのだと聞いて膝を打ちました。光の透過性を活かした演出や心地よく反響する音など、楽しい発見がいくつもあった住空間でしたが、地域に根ざしたライフスタイルや施主の仕事と紐づいているからこその、必然的な家のカタチだったのでしょう。
日本各地の住宅を取材させて頂きましたが、生い茂る植物が仕上げ材という家や、至る所にアート作品が展示され人を招くための家など、いずれも施主がどういう暮らしをしたいかが、家づくりに反映されていることがよく分かります。冒頭の問いの「理想の家とは?」の答え合わせをしながら、取材をさせて頂きましたが、やはりその答えは、施主自身の中に隠されているんだなということを、折に触れて感じました。
この特集をお読みいただき、いいなと思う価値観やライフスタイルの家を見つけられたら、ぜひ自分だけの理想の家づくりにトライして頂きたいなと思います。