大寒波の中をさまよい、やっと見つけた一杯のコーヒー。 Editor’s Voice No.217
Editor’s Voice
大寒波の中をさまよい、
やっと見つけた一杯のコーヒー。
「大人は誰しも、人に教えたくない自分だけのカフェを持っているもんだ」
とはお酒が飲めない元上司の言葉ですが、新入社員のときにすてきなカフェでこれを言われてから、「私は自分だけのカフェを持っていないから大人になれていない…」とこっそり気にしていました。
月日は流れ。カフェの特集を担当するにあたり、話題のカフェ、話題になりそうなカフェをリサーチすることに。今回はカフェから一歩踏み込んで、コーヒーがおいしいカフェ、それも豆の選定・焙煎から手がける「ロースタリーカフェ」に注目しよう! ということに決まりました。
屋久島、能登、宮古島、大三島…。焙煎機が大きいからか、それとも焙煎に集中したい焙煎士さんの好みなのか、「ここだ!」という絶景&絶品ロースタリーカフェは訪れるのに気合いのいる場所ばかり。ならばここを旅の目的地として楽しんではどうか!? と考え、「最果て焙煎所」という企画が生まれました。
しかし取材時期は1月〜2月。今年は容赦ない寒波が訪れ、暖かいはずの南の島も天気大荒れ。能登にいたっては飛行機が降りないほど。その他にもいくつかの不運が重なり、取材前日にある店が「もう取材できない!」という事態に。泣きそうになる私たちに、たまたまその地方が地元だったカメラマンさんが伝手を使って調べてくれたところ、誰も聞いたことがない、見たこともない、でも絶対すてきなカフェが浮上。しかも、そこは炭焼きで焙煎をしているとか。「まずは行ってみるしかない!」と、新幹線の駅から車で一時間強かけて岡山と広島の県境にむかいました。
現れたのは、築88年の元郵便局を改装した〈三村珈琲店〉。中には古道具や古家具、そしてそれに寄り添うように年代物のフジローヤルの焙煎機(現役)が置かれ、まるでタイムスリップしたかのようでした。そんな空間でいただいたコーヒーはまた格別……。急に訪れて涙目で取材を頼み込む怪しい私たちにも優しく対応してくださり、この企画にめでたく掲載できることになったのでした。なかなか行けない場所ですが、わざわざここを訪れる価値は絶対にあるところ。保証します!
気づけば私はもうけっこうな歳になりましたが、この特集でやっと大人になれた気がしています。
みなさまもこの一冊でよきカフェとの出会いがありますことを!