“整理整頓”が世界を救うかもしれない。 Editor’s Voice No.252
Editor’s Voice
“整理整頓”が世界を救うかもしれない。
多くの人にとって“整理整頓”という言葉と初めて遭遇するのは、小学校の教室ではないでしょうか。黒板の上に“整理整頓”と書かれた大きな紙が貼られていたり、ひょっとしたら書道の授業で初めて書いた文字だったかもしれません。それほど日本の教育に浸透し、幼い時から叩き込まれたこの概念を、あまり習得できないまま大人になっていましたが、ついに今回の特集「暮らしを整える、整理術」で再び遭遇することとなりました。
特集では、整理の達人たち10組の自宅や事務所の整理術を取材させていただきました。それぞれの作品からも分かるように、深澤直人さん、佐藤可士和さん、〈トネリコ〉の米谷ひろしさん&増子由美さんなど、小学生の時から勉強はもちろん、整理整頓も完璧だったに違いありません。今回の取材で訪れた空間は、達人たちによって隅々までコントロールされ、「棚を見れば人がわかる」や「壁に見えなければ、壁面収納ではない」、「捨てる勇気が、価値観を磨く」などの達人たちの強い信念と言葉によって維持されていました。どの取材の場も、ストイックな精神に包まれていましたが、決してピリピリとした緊張感や生活感のない冷たい感じというわけではありません。いずれの達人の方々も、いくつもの取捨選択を繰り返し、審美眼を磨き続けた後にたどり着く、空間やモノに対する優しい愛情で溢れていました。そんな達人たちならではの、美しいミニマムな空間を今月号ではたっぷりと紹介しています。
また、今月号ではベストセラー『人生がときめく片づけの魔法』の著者、こんまりこと近藤麻理恵さんにもそのメソッドを取材させていただきました。こんまりさんのメソッドは、決して“捨てる”ことが目的ではなく、「片づけをするということは、大切なものを見つけること」ということ。そのことからこんまりさんもまた、モノや日々の生活への温かい眼差しを持っていると感じました。ステイホームの期間中、こんまりさんのメソッドに従って部屋の片づけを進めた人も多いと思いますが、それはおそらく日本だけではありません。アメリカや他の国でもこんまりさんの本やNetflixのドキュメンタリー『KonMari~人生がときめく片づけの魔法〜』を観て、多くの人たちがこんまりさんのメソッドで部屋の整理整頓を進めたのではないかと思います。『愛の不時着』や『クイーンズ・ギャンビット』で一息入れながら?
ここで勝手な想像ですが、“モッタイナイ”が世界で通じる言葉となったように、“セイリセイトン”も、この先、多くの国で使われる言葉になるのではないでしょうか(なってほしい)。そして、整理整頓を通してモノを大切にする人たちが増えていけば、資源の浪費や環境破壊という大きな問題を少しでも改善できるかもしれません。そんな希望を、小学生の時からぴんときてなかった“セイリセイトン”に感じ、整理整頓の大切さを改めて噛み締める取材となりました。ぜひ、世界を救う一つの方法として! 今月のカーサブルータスを手に取ってみてください。