マガジンワールド

From Editors No. 26 フロム エディターズ 2

From Editors 2

京都の町家の料理家のアトリエへ。
今回の特集をつくる過程で、1冊の本に出合った。家呑みのための、ごく簡単で気の効いたつまみのレシピ集。出てくる料理はどれもこれも、すぐできそう。それでいて、食材の取り合わせやスパイスにちょっとした工夫があって、思わず試してみたくなるものばかり。その中でふと、「ちぎりかまぼこ」という一品に目が留まった。これは……。驚くことに、というか、案の定というか。料理名がそのまま作り方。かまぼこをちぎって盛り付ける。以上。目からうろこの、その自由な発想に感動してしまい、著者である高谷亜由さんにぜひとも会いたくなった。
 
高谷さんは京都在住。20代で旅したベトナムの食や現地の人々ののびやかな暮らしに感化され、東京のエスニック料理店の厨房で働いたあと、京都の町家を改装してベトナム・タイ料理を教えるアトリエを構えた。障子を取り払い、小さな台所を使い勝手よく整え、階段下の押し入れは食器棚に。ベトナムやタイで求めたたくさんの調理道具や器や食材が効率よく収まっている。
 
撮影の日に並べてくれたのも、つまみになる料理。高谷さん自身ワインが好きで、普段の食卓でもひとりで、ときに友人たちとワインを開けるのが日常。そんな中で生まれた、アイデアとエスニックな味付けの効いたレシピたち。おしゃべりをしながらも手際よくちゃっちゃと作った料理が並んでゆく。そして最後にちぎりかまぼこ。いただきます……ああ、これは。つるりとしていない、でこぼこのかまぼこが新鮮、楽しい。選べるように用意されたタレも絶妙で、これはちゃんと料理ですね。そのほかの料理もみなシンプル、けれどアイデアがあってユニーク。器の取り合わせ、テーブルでのプレゼンテーションも、さりげなく、でも高谷さんらしいスタイルで、空間も時間もとても心地よい。いいね!おいしいね!を連発しながらの撮影は至福のひとときでした。
井狩由貴(本誌編集部)
 

撮影途中の高谷さんの食卓。かまぼこは、ぜひ本誌をご覧ください。
撮影途中の高谷さんの食卓。かまぼこは、ぜひ本誌をご覧ください。


アンド プレミアム No. 26

ふだんの食卓

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