一杯のお味噌汁からわかったこと。 From Editors No. 46
From Editors 1
一杯のお味噌汁からわかったこと。
大学進学と同時に田舎から上京してきて、はや10年。それを機にふだんの食事は変わり、一時期は食べ歩きにはまって外食三昧だったり、忙しさにかまけてコンビニに頼ったり…。でも今になって体が欲するのは、実家の母が作っていた、お味噌汁や野菜の煮物など、素朴だけどほっとする、母のふだんの料理だったりします。
今月号は、そんな「ふだんの食卓」がテーマ。2016年2月号の続編でもある今回も、ふだんの食卓のお手本として、料理家たちの自宅を訪ねてきました。仕事用ではない、自分と家族のために作る料理。それらに共通していたのは、あっけにとられるほど、シンプルで簡単だということでした。撮影現場では、「これならできそう!」と喜びの声が上がりっ放し。特別な食材を使わなくても、旬の素材見極めて、丁寧に料理するだけで、とびきりの味になるとは大きな発見でした。
とくに印象的だったのが、植松良枝さんの”揚げゴボウの赤だし 青柚子の香り”。
前日に煮干しと昆布でだしをとっておき、(ここはちょっとだけ頑張ります)
当日はさっと素揚げしたゴボウに、赤だしを注ぎ入れ、最後に青柚子をすり入れるだけ。食材も手順もごくシンプルだけど、ひとつひとつ、丁寧に下ごしらえすることで極上の旨さに。食した後、しばらく放心する幸せな時間を含めて、作る価値のあるレシピでした。
また今回は、巻頭で取材した7人の料理家に、ふだん使っている調味料も教えてもらいました。毎日料理するのはやっぱり難しい…という人も、いつもの冷奴にかける醤油をちょっとこだわってみるだけで、十分豊かな食卓になり得ると思うのです。いきなり全品にトライできなくても大丈夫。この一冊から、ふだんの食卓の新定番になるレシピが見つかれば幸いです。