「古いものは、新しい」。 From Editors No. 48
From Editors 1
「古いものは、新しい」。
行列スイーツもいいけど、何代も同じ味を守り続けている老舗のお菓子。最新のスパもいいけれど、富士山の絵がかかれた、昔ながらの銭湯。若手イケメン俳優もいいけど、アウトレイジ最終章で燻し銀の演技をしていた塩見三省。
今この文章を書いている私が、最近ハマっているものや、人に共通していえることは、今年30を迎えた私の年齢よりも、ずっとずっと先輩にあたる、ものや人だということ。つぎつぎと出ては消えるものに振り回されがちな昨今だから、昔からあるものがとても新鮮に映り、そして信頼がおけるのです。
渋すぎる個人的な趣味はさておき、今月はそんな時代を超えて愛されてきた、本当にいいものを紹介する特集です。超えてきた月日によって磨き抜かれたものには、新しいものでは味わえない、深い魅力があると思います(新作という言葉にも、抗えない魅力はあるのですが)。
じゃあどうして、ともすれば古くさいものに心惹かれるのか?取材を通して、物としてつくりやデザインの完成度が高いから生き残ってきたということはもちろんですが、その背景にある、歴史や人間ドラマにも魅了されるからだと、一貫して感じました。それは、70年代に建てられ、向田邦子も住んでいたという美意識あふれるヴィンテージマンションだったり。それは、明治維新の際、店を閉めようとしていたところ、勝海舟から町人のために続けるべきだと説得されて今に続いている最中だったり。どれもへえ〜、な逸話に彩られていて、ドラマチック。そこに自分の人生を重ねたときの喜びこそ、時代を超えたものの魅力だと考えます。
新しくて、いいものは、世の中にたくさん溢れているけれど、果たしてそこに思いを馳せられる、歴史やドラマはあるのだろうか? 物事がスピーディに移り変わる今だからこそ、自分の生きてきたこれまでの時間と、これから生きていく時間を重ね合わせられる、真にいいものと出会えることを祈って。