クラシックなものを残していくには。 From Editors No. 72
From Editors 1
クラシックなものを残していくには。
世の中がせわしなく動き、変化の大きい時代。だからこそ時の流れを超えて価値を持ち続ける「もの」や「こと」とともに暮らすことが、ベターライフにつながるのではないか。そんな想いで今回の「クラシック」特集はできました。
いくつか担当した企画の中でも、特に興味深かったのが「クラシックなもの、の理由」というページ。誕生から50年、100年と愛され続け、現行品が販売されている10点のプロダクトについて、なぜ時代を超えられたのか、その歴史を解き明かしました。詳しくは誌面をご覧いただくとして、本を作りながら、自分なりに見つけた「クラシックになり得る条件」があります。その中で、最も大切だと思うのは、クラシックになり得たものには、それを愛する人々がいたということです。
どんなに歴史があろうとも、それを愛し、使い続ける人がいなくなってしまえば、そのプロダクトは無くなってしまいます。当たり前のようですが、自分のものの選び方、使い方を振り返ったときに、生活の中に「クラシックなもの」がどれほどあるか。歴史あるものの、その歴史を知ろうとしているか。不便でも古いものを愛おしむ時間を設けているだろうか。無関心でいるうちに、「クラシックなもの」は無くなってしまいます。
たしかに最新のプロダクトは、使い切れない程に機能も充実していて、手入れも楽だし、モダンでかっこいいかもしれません。ただ、それを使う時間が「おもしろいかどうか」で判断すると、クラシックなものを選ぶことも悪くないと思うのです。
英国女王のエリザベス2世は、自分のお気に入りで、歴史あるバッグブランドの経営危機を、私財を投じて救ったそうです。もちろんそこまではできませんが、自分も消費者として、リテラシーを高めていきたいと思う1冊になりました。一人でも多くの人が、手にとってくださるとうれしいです。