マガジンワールド


From Editors No. 176 フロム エディターズ

特集内容

THE BEST MUSEUMS
日本のベスト美術館と世界の最新ミュージアム

美術館の魅力とは作品を収蔵して一般に公開するための【建築】による力と、【展示】すなわち作品の力の両輪によって発揮されるものではないでしょうか。そんな観点から本年度の美術館特集は、建築やアートに造詣の深い方々とともに日本のBEST美術館を徹底考察。【建築部門】【展示部門】それぞれをランキング形式で発表! 一度は体験すべきスポットがずらり登場し、今後の美術館巡りに役立つこと間違いなしです。

表紙を飾った美術館は、パリのブローニュの森に開館した現代アートの新しい殿堂、フォンダシオン ルイ・ヴィトン。設計を手掛けたフランク・ゲーリーは、1997年に開館したビルバオ・グッゲンハイム美術館によって、衰退した街をインパクトのある建築で訪問者が後を絶たない都市に生まれ変わらせることに成功。これにより「ビルバオ効果」「スターアーキテクト」という言葉が生まれ、世界的な建築ブームのきっかけを作った張本人なのです。そんな御年85歳の巨匠建築家に直撃インタビューし、パリの新アイコン的ミュージアムに迫りました。

もちろん日本の巨匠建築家の最新ミュージアムも登場。”美術館づくりの名手”谷口吉生の集大成的作品である京都国立博物館 平成知新館や、安藤忠雄が手掛けた秋田県立美術館などの見どころもたっぷりとお届けします。

第二特集では「読み継ぐべき、絵本の新定番50」も発表。斬新なアイデアに大人も子供も驚き、ちょっと癒される、最新絵本をご紹介します。さらに、毎年恒例「秋のデザインイベント予告」も収録。アートとデザインの秋を満喫するための一冊に仕上がっております!


 

Editor’s Voice

神奈川県立近代美術館 鎌倉のワケ。
日本のモダニズム建築の傑作と言われる神奈川県立近代美術館 鎌倉。今回の美術館特集ではワケあってホンマタカシさんにたっぷり撮り下ろしていただきました。そのワケとは、雑誌『relax』2003年6月号の鎌倉特集で、当時、編集長だった岡本 仁さんが書いた文章が雄弁に物語っていたので、その転載をもって代えさせていただきます。


3月の最終日の日曜日に『井上長三郎−独創諧謔の画家』展を見た。といっても特に作家に興味があったわけではない。その日を最後に、鎌倉の近代美術館が補修工事のため、しばらくの間、休館になると聞いていたからだ。井上長三郎の絵は素晴らしかった。でも近美で開催されたのでなければ、自分がこの画家を知ることはたぶんなかったと思う。近美は自分にとってそういう場所だ。そして同じように思っている人は(少なくとも鎌倉には)たくさんにるだろう。その日、いつものようにゆっくりと展示を眺めてから、2階のカフェのテラスでコーヒーを飲みながら池を眺めた。そして、2階から階段で降りたところにある、この建物でいちばん好きな場所、ピロティに常設されたイサム・ノグチの彫刻の前で記念写真を撮った。

ル・コルビュジエの弟子であり、1937年のパリ万博の日本館の設計でグランプリを獲得するという、これ以上望めないほどの華々しいデビューを飾った坂倉準三が、国内ではじめて建てた公共建築がこの神奈川県立近代美術館だ。それが、こんなにも簡素な建物であることに心を打たれる。軽い。その軽さは深く考え抜いた末に出てくる種類の軽さだ。だから何度も何度もここに来てはのんびりと和んでしまうのだ。

建築誌か何かで、近美がこの後も永遠にこの場所にこの建物のまま存続することが保証されているのではないことを知った。平家池のほとりに坂倉準三の近代美術館のない鶴岡八幡宮なんて考えられないし、この小さな箱のような近代美術館のない鎌倉なら、これ以上住み続ける理由もないとさえ思う。このようなことが杞憂に終わるよう、切に願っている。


実はこの美術館は2016年3月をもって閉館となるため、その杞憂が現実となる日が徐々に近づいてきたのです。そして、当時のページの撮影を担当したのがホンマタカシさんだったのでありました。

『relax』2003年6月号(マガジンハウス)の該当ページ。ご覧になりたい方は古書店でお探しくださいませ。
『relax』2003年6月号(マガジンハウス)の該当ページ。ご覧になりたい方は古書店でお探しくださいませ。


特集担当編集/西尾洋一