小さいから、古いからこそ、実現できる何か。 From Editors No. 51
From Editors 1
小さいから、古いからこそ、実現できる何か。
新年最初の号は、ここのところ恒例となった「整える」シリーズの特集です。「小さくても、古くても、居心地のいい住まい」それはまさにベターライフにとって最も必要なこと。とはいえ、居心地の良さというのは人それぞれ。ある程度の広さは自由度の高さにもつながるから「狭いのはちょっと遠慮したい」という人もいれば、傷や汚れのない壁や床やドア、快適で最新の水回りを求め「なるべく築年数の浅い物件希望」という人だっている。だから、「小さい、古い」という一見ネガティブな要素に、「居心地の良さ」を求めるのは難しいことに思いがちですが……。今回取材させていただいたお宅は、どこも「小さい、古い」からこその「居心地の良さ」を実現した部屋ばかり。誌面で紹介している、一級建築士の大内久美子さんの事務所兼自宅は、築40年を過ぎた、古くてコンパクトなコーポラティブハウス。建築士として人々の暮らしを快適にするアイデア提案を生業にしながら、自らの生活の荒廃ぶり!(笑)に一念発起し、自宅をリノベーション。きちんと眠る、すっきり目覚める、おいしく食べる、快適に過ごす……、そういう普通のことが普通にできる部屋を実現した手腕を、ぜひ誌面でご確認あれ。いちばんの目玉は、集合住宅の一室でありながら、リビングに設えられた暖炉。バイオエタノール燃料をつかったもので、煙突が必要なく、静かに暖をとれ、部屋の雰囲気ごと温めてくれる。家で過ごす時間がうれしくなるというのが、心地いい住まいなんだろうなぁ、と思える部屋でした。しかしいいなぁ、あれ。
(岩下祐子/本誌編集部)