変わる住宅。 Editor’s Voice No.250
Editor’s Voice
変わる住宅。
家で過ごす時間が長くなったこの1年。住空間をより快適にしようと考えることの多かった1年だったのではないでしょうか。そんな折、建築家・谷尻誠さんの自邸が竣工し、お話を伺うことができました。
この住宅の計画は、2018年に考え始められたものなので、当然のことながら、2020年の状況を予見していたわけではなかったのですが、これからの家のあり方や、新しい家のつくり方としてひとつの方向性を指し示してくれているものだと感じました。
家の中にいながら、外の空気を感じられる。気分によって居場所を変え、用途によって空間を変えることができる。エアコンも断熱材も使っていないのに、夏はひんやりとし冬は暖炉で温まることができる。
谷尻さんは、「これからの時代に必要なのは、変化に負けない家」と話してくれましたが、変化に柔軟に呼応していくことが、これから先の暮らし方のキーワードになりそうです。
その他、今年取材させて頂いた住宅の施主や建築家からも、「変化」という言葉が頻出。外出が難しくなり、四季の移ろいを感じにくかったことで、四季の「変化」を感じられる郊外に住みたいという人も増えました。家の中で、適切な距離感を保ちつつどのように居場所をつくるか、同じ空間にいながら、家の中で光の変化をどのように楽しむか、家を設計する上でのアイデアやヒントがいくつもありました。
この1年を境に、住宅のあり方は大きく変化することでしょう。2021年以降、建築家と施主がどのような家を生み出していくのかを見守りつつ、穏やかな日常が少しでも早く戻って来ることを願っています。
編集担当/奥村健一