新たな時代にふさわしい、神話と現実が交わる場所へ。 Editor’s Voice No.237
Editor’s Voice
新たな時代にふさわしい、神話と現実が交わる場所へ。
10月22日の即位礼正殿の儀を経て本格的に令和時代となった感があります。
私ごとですがこの日は校了作業の真っ最中でちょうど熱田神宮に祀られている草薙神剣について校正をしていたこともあり、祭儀が執り行われる際に雨が止んで虹が出たことに少し運命めいたものを感じたものです。自然現象に意味を見出すことは古来世界中で行われてきたことで、聖地というのももともと岩や滝といった自然物に意味を感じた人々がそこに社を建てて祀りはじめたものです。
とはいえ実感としては、聖地や神域と言われている場所には、明らかにその外部とは異なる不思議と透き通った空気が漂っていることがあります。それがなんなのかはわからないですし科学的に解明できるものでもなさそうです。ある宗教学者は「地球のツボ」という表現をしていましたが、まさに経絡とかツボとかそういったものとして聖地はあるように思います。
天気の話に限らないのですが、こういう特集を作っていると身の回りに不思議な偶然が多発するように感じます。ただそれは単なる思い込みだった、と後から思うことも多いものです。結局、聖的なものごとに意識を集中すると、いろんな現象に日常を超えた過剰な意味付けをしてしまうのかもしれません。そして、偶然が偶然と感じられなくなった時に人は新たな旅に出るのでしょう。
で、何が言いたいのかというと、今回個人的に最も運命を感じてしまったのが本誌最終校了日のまさに翌日にカニエ・ウエストの新譜『JESUS IS KING』がリリースされたこと。何回もリリース中止を繰り返し直前まで出る出る詐欺を続けていたカニエの渾身の信仰告白。最終予告した日になってもなかなかリリースされず「また出ないんじゃねーか!?」というSNSの声に対して「いま最終ミックス中だ、俺だって寝てねーんだよ!(意訳)」とカニエがTweetしているまさにその時、私も日本の片隅で校了作業最終局面でした。
『My Beautiful Dark Twisted Fantasy』で2010年代音楽シーンを強引にこじ開けたカニエが、その10年代の締め括りとして到達したのがゴスペル。結局『YANDHI』(ガンジー)は出さずにジーザスへ。新たな旅は人それぞれです。