京都のアマンとパーク ハイアット。 Editor’s Voice No.238
Editor’s Voice
京都のアマンとパーク ハイアット。
〈アマン京都〉と〈パーク ハイアット 京都〉。
長くオープンを待ち望んだ京都の外資系ラグジュアリーホテルを2つ、訪れた。
彼らの目には京都がどう映るのか、どう表現するのか、
日本人の視点から見た京都ではない京都に興味があって、ワクワクしていた。
まず訪れたのはアマン京都だ。
京都駅からの送迎車に揺られて40分、アマンらしく、たっぷりと時間をかけて目的地へたどり着く。
それだけで、どこか知らない秘境へ連れられてきたような高揚感。
だが敷地内への重い扉が開かれて、見れば、ただ庭である。
もちろん、エントランスのパビリオンやレストランは、そうとわかるような存在感であるのだが、先へ進むほどに、木立と岩と、苔と小川と、注連縄に地蔵…建物の存在感が、まるでない。
聞けば元々この土地は、西陣織の織元が、私設美術館を開こうと40年もの歳月をかけて育んだ庭だった。
その土地に20年前に出会い、惚れ込んだ建築家ケリー・ヒルが、アマンを設計するにあたり、ここに満ちる澄んだ”気”を消さぬよう、建物を消すことに専念したのだという。
だから、ただひたすら庭である。
朝も昼も夜も、庭を歩くのが楽しい。部屋の中から見える庭が美しい。
金閣寺のすぐ近くにありながら、ここは京都なのか、それともどこか別世界なのか、わからなくなるような幻想的な滞在だった。
次に訪れたパーク ハイアットの滞在は、また全然違っていた。
ダイナミックな北村安夫の庭、身の引き締まるような竹中工務店の建築、トニー・チーの内装の色っぽさ…館内を構成するすべてがそれぞれに魅力的だが、ここの最大の魅力は、景観である。
石畳の小道の両脇に瓦屋根の家々が並ぶ二寧坂の入り口、創業142年の料亭〈山荘 京大和〉の敷地内にあって、廊下から、ラウンジから、部屋の中から、館内のいたるところから、五重塔や京都の町並みが目に入ってくる。
館内にいながらにして京都の街を堪能できるのだ。
しかも、いる場所によって見える景色も、見え方も違っている。屋根屋根が迫ってくるような部屋もあった。
心踊り、館内のいたるところを歩いた。
ホテルの中で、京都の街をめぐる体験。なんだか京都にどっぷりと浸かるような、不思議な感覚に陥った。
歴史ある観光地、京都の滞在を変えるホテルがこうして、次々と誕生しているようだ。
春にオープンを控えるエースホテルも非常に楽しみである。